VEGANの人が栄養失調でなくなったというニュースがあった。
動物性食品を取らないと、タンパク質や必要な栄養素が取れないんじゃない?
VEGAN、しかもロウフード、果物のみ摂取して暮らしていたインフルエンサーが先日、餓死した、というニュース。
(ニュース元:https://nypost.com/2023/07/31/vegan-influencer-starved-to-death-friends/)
とても衝撃的です。
VEGANとは、ベジタリアンの一種ですが、この方はVEGANというか、それよりきつい、フルータリアン、しかも、ナッツなどは食べず、ジャックフルーツなどの生の果物のみで暮らしていた、ということです。
ここから、本日のお題「VEGANは栄養失調にならないか?」を見ていきましょう。
↑ちなみに、肉の摂取量の国別の違い。驚くべき差がありますね。
目次
タンパク質は動物性食品でしか摂れない、という思い込み
私たちが信じている栄養についての知識。
「タンパク質を摂るにはお肉。植物性の食べ物だけでは、十分なタンパク質が摂れない」
PBWFの食生活を始めるのを躊躇する方の理由、第一位。圧倒的にこれです。
答えは、植物性の食品だけで、タンパク質は十分に摂ることができます。
我々の現代の食生活においては、タンパク質を過剰に摂りすぎることはあっても、摂らなさすぎる食生活には基本的にはなりません。(ただし日本では最近貧困による栄養失調の問題も出てきているので一概にはいえなくなっています。)
まず、目安となる数字は、↓で計算することができます。
もし、簡単にタンパク質の必要量(1日)だけ知りたい、としたら、だいたい
自分の体重(kg)×0.8 グラム
と考えます。これは米国のRDA(Recommended Dietary Allowance)栄養所要量の値です。
本当に目安ですが、1日に必要なタンパク質量。
まず、体重60kgの人だったら、60×0.8 = 48g のタンパク質を摂取する必要がある、ということがわかります。
植物性食品に含まれるタンパク質量
玄米のご飯1杯 4.2g 3食食べたら12g
豆腐半丁 10g 一丁食べたら20g
納豆1パック 7g 1パック食べたら7g
ファラフェル 1個 4g程度 2個食べたら 8g
茹で小豆 50g (片手にこんもり程度)4g程度 (必須アミノ酸含む)
ここまでで、51g。 ヘンプパウダーなど加工の少ないプロテインパウダーを少し飲んだらあっという間に60gを超えて、ある意味タンパク質量が超過してしまうくらい。
どうですか? 植物性の食品だけで、意外と簡単に必要なタンパク質量が摂れてしまうことがわかっていただけましたでしょうか?
動物性の食品は本当に悪者なのか?
どうして体に悪いの?
簡単に答えてしまうと、ベーコンやハムなど加工肉は、健康の観点からは絶対的に悪い。
それ以外は、人、食べる量、状況(その人の病歴)による。
例えば、動物性食品の悪いところとしてはっきりしていることは、こんなこと。。
- 牛乳に含まれるタンパク質「カゼイン」の摂取は、がんを誘発する。(植物性のタンパク質にそのような性質はない)
- 肉類、特に加工肉(ベーコン、ハム)の摂取は、大腸がんの確実なリスクとなる
- プロテインドリンクの摂取は、人によって腎臓の機能を低下させるリスクとなる
動物性食品は悪くない!と反論するとしたら
第一次大戦の頃、明治、大正時代の日本では、東北で飢饉がおこりました。そうすると、ご飯を食べられなくなるから、娘さんは売られていました。働けなくなったお婆さんは姥捨山に捨てられました。
弱い子供で小さい子供は未熟児で生まれてきたら、体力がなくて死んでいました。
現代はそのようなことがありません。
多くの穀物を収穫するための品種改良・化学肥料・化学殺虫剤の発明があったから、
穀物の収穫量が増えました。
日本は豊かになったので、それらの穀物で育った牛肉や牛乳を摂取しました。
動物性の食品は、人間の体に必要かつ自分で作れない必須アミノ酸の9種類を、植物性より多く、そしてバランスよく含んでいます。
同じ動物である人間の体にとって、植物性のタンパク質より親和性が高く栄養成分を吸収しやすい、というのは本当です。吸収率が良いので、代謝も細胞分裂のスピードも上がります。→成長が早まる。
背も高くなる、体重も増える。筋肉もつく。
化学肥料で穀物の収量が増え、食生活が動物性食品中心になったことで、
娘さんも売られなくなったし、虚弱ゆえに死んでしまう子供も減りました。
めでたし、めでたし。 とはならなかった。
よかった反面、ひずみが生じている現代の食生活
動物性の食品を食べると
- 体格が良くなる
- 平均寿命が伸びた
- 初潮年齢が、17歳から12歳になった
- がん、心臓疾患、糖尿病と診断される子供が増えた
- 平均的な欧米の食事をしていると、19歳より血管の詰まりを生じさせる
吸収のよい動物性のタンパク質であっという間に成長し、体はぐんぐんつくられ、臓器もどんどん成長する。
死んでしまう虚弱児もいなくなり、全員の体が完成するまでの時間が短縮されました。
しかし、同時に、老いるスピードも速くなった。
現代の欧米型食生活をする人々は、
餓死しなくなった。
動物性の食品の摂取により、速く成長して、体が完成し、生き延びる。
そして、そのまま、速く老化する。
しかしながら、医学や医療技術、薬の進歩により、病気になってもなかなか死なない。
日本人の場合、男性の平均寿命は81歳、健康寿命は約73歳。女性の平均寿命は88歳、健康寿命は76歳。
健康寿命が尽きて、寝たきりや慢性疾患やがんになっても、平均寿命が尽きるまで、10年程度死なないで生き続ける。
動物性の食品は、時計の針を速く回す
確実に言えることは、
動物性の食品は、時計の針を速く回す、という事実です。
このことが良いか悪いか断罪するのは、一概に言うのは難しい。
元々消化吸収能力の低い人、栄養吸収をしにくい代謝のくせのある人は、
たまに魚由来などの動物性タンパク質を摂取して栄養補給をした方がいい場合もあります。
一方で、
すでに心臓病、糖尿病、がんなど、症状がある場合は、動物性の食品や精製食品はとにかく避ける方がいい、と言えるケースです。
結論:VEGANは栄養足りない食生活なの?
冒頭のVEGANインフルエンサーのケースは、食生活で最も避けるべきこと、十分なカロリーを摂取することを自らが拒む、ということをやってしまいました。
「野菜を多く食べる」とか「植物性のものを多く食べる」というと、ほうれん草やレタス、キャベツ、ブロッコリーなどの緑色の葉物野菜を多く食べる、というふうに想像しがちです。
でも、葉物野菜それだけで十分なカロリーを摂ることは不可能です。
この点、皆さんがプラントベースについて最も誤解しやすい点ですね。
PBWFで大切なことは、いも、まめ、穀類などをたくさん取り入れて、とにかくお腹がいっぱいだ、と感じるまで食べること。そして脂質をナッツから摂ること。
これらをきちんと必要な量摂取すれば、VEGANであっても栄養失調になることも、餓死することもありません。
彼女はSNSに自分の食生活をアップし、人々の賞賛や注目を集めていました。
自分で自分の状態がはっきり認識しにくく、ある種の拒食症の状態に近かったのでは、と感じました。
代謝のくせは人それぞれ
当たり前のように摂取カロリーや栄養素が少なければ不健康になります。
でも例外的に、
沖縄に、フルーツと焼酎だけで何年も生きているご老人がいらっしゃったこともあります。
天台宗千日回峰行の僧侶の摂取カロリーは、活動に対してどう考えても少なすぎるし栄養素も足りないそうです。
また、植物性の食事が全く合わず、消化吸収ができない人もいます。
同じグラム数のプロテインを飲んだからといって、同じ量だけ体に吸収する訳ではありません。
その人それぞれの体の代謝機能や体質により吸収量、吸収速度、吸収箇所、吸収できる栄養素、全てそれぞれ違います。
PBWFは、万人の健康に良いことは証明されています。
でも、だからと言って、みんなが同じ食事法をすれば良いわけではありません。
今日は、「人間だからおおむね同じ、だけど、みんなそれぞれ自分自身の代謝のくせに合わせた食事をするべき」ということをお伝えして終わりたいと思います。
具体的にトライするのが楽しみになってきませんか??♪
化学肥料や動物性食品に今までとても助けられてきたことは事実です。
この事実をしっかりと受け止めつつ、次に向かうべき目標を考えることが、最終的に体も心も他の人にも心地よいバランスの取れた着地点が見つかるのではないか、と思います。
参考:
https://academic.oup.com/ije/article/49/5/1540/5894731?login=false
http://kumamoto.lin.gr.jp/shokuniku/eiyochisiki/niku_protein/dobutu_tanpaku1.html
eCornell Plant Based Nutrition授業