そのサプリ、本当に必要?

ビタミンCのサプリメントvsりんご

巷に溢れるサプリメント。私たちは、「不純物が取り除かれ、安心で、効果が高い、そして便利」なサプリを信じて飲んでいます。そう、まさに「信じて」飲んでいるのです。今日はそんなサプリメントとホールフードを比較してみるお話です。

本記事でわかること

  • りんごとビタミンCサプリメントの抗酸化力の比較
  • ビタミンAとビタミンEのサプリは、あまり効果がないし、とらない方がよい場合もある
  • 「丸のまま ホールフード」は、個々の集合より効果がある

丸ごとのりんごが持つ、ものすごい抗酸化力

この話は、プラントベースホールフードの第一人者、T・コリン・キャンベル博士の著書に書かれている内容で、とても有名かとも思います。

100gの生のりんご(約1/2カップ)が持っているビタミンCと同じ効果の抗酸化活性を調べると、
サプリメントの純粋ビタミンC1,500mg相当だということが判明しています。

ビタミンCサプリメント、たとえば病院で処方される従来のシナールは、1袋200mgのビタミンC。

毎食2袋飲んで1日6袋飲んだら1200mgです。

ところが、100gのりんごを丸ごと化学分析にかけてみても、そのビタミンCの量は「5.7mg」しか見つからないそう。

丸ごとのりんごの抗酸化力は、分離された単体の化学物質の263倍もあったということです1

りんごには、数百種類の化学成分が含まれています。
マルチビタミンの錠剤には、どんなに多くても数百種類の成分表示はありません。

そしてなおかつ、それが数千通りの化学反応や代謝系に影響しているとのこと。

それらが複合的にオーケストラのように作用しあって抗酸化活性作用が生まれます。
ビタミンC単体がこの抗酸化活性に寄与する割合は、なんと1%以下。

ビタミンCが抗酸化作用を持つ、ということも、
りんごのその他の化学物質による全体的な背景がなければ、成り立たない、というのが事実です。

単体で成分を摂取することが無意味となりうることがわかります。

逆に摂ると害になる場合も

単体の化学成分を抽出したサプリは、その成分が健康に寄与してこそ、飲む意味があります。
寄与しないまでも、マイナスにはなってほしくない。つまりなんの効果もなかった、で止まってほしい。

ところが、実際は、明確に害になるケースがあります。

とえばビタミンEのサプリと、ビタミンA(ベータカロテン)のサプリ。
ビタミンEのサプリをとっても、虚血性心疾患、糖尿病、白内障などのリスクの低下は見られませんでした。そればかりか、30万人近い被験者による比較試験において、サプリ摂取者の死亡率の方が高いことが判明しました。

このような研究結果は、ビタミンA(ベータカロテン)のサプリ摂取でも出ています。

フィンランドで行われた喫煙者の研究において、ベータカロテンのサプリメントを6年半与えたところ肺がんによる死亡率が46%増加した、ということです。加えて心血管系の死亡もサプリ摂取により26%増加しました。更なる死亡者を増やさないため研究は早期に中止されたとのことです。

これらは「WHOLE」に書いてある内容ですが、それぞれに査読つき論文の参照が示されています。

「丸のまま」は、個々の集合より効果がある

このような事実は、私にとっては大変なショックでした。

現代人は、なかなかきちんとした食事を取れないから、また、海洋汚染の影響や、野菜の栄養の低下があるからそれを「サプリで補おう」と考えてサプリをとっています。

「野菜より、サプリメントの方が完成度が高い。」
「サプリさえ飲んでいれば、健康の帳尻が合う」
私もこう考える人の一人でした。

特に「健康」「運動」が注目されてくる中で、世界でのサプリメント市場は2000億ドル市場の巨大産業となっています。

そして、サプリの広告。
「苦労しないで効果が出る」

昔、金融の偉い人に聞いたことがあります。
「うまい儲け話は絶対にありません。」

その話を思い出します。
魔法のサプリはないのです。
丸のままのりんご、それが魔法級の完璧さを備えている、というだけ。

とはいえ、
自然豊かで野菜も健康に育つ環境だったらあまり心配ないけれど、
地方都市で通勤生活をする人間にとっては、やはりサプリメントで補いたい気持ちも残ります。

その場合は、なるべく加工度合い、単一成分抽出によって作られているものではないサプリメントを活用したいものです。

モリンガ、チアシード、キヌアなどのスーパーフードも、天然のサプリメントと考えられるかもしれません。

当たり前のことですが、サプリは栄養補助食品。 
プラントベースだけでは補うことの難しいと言われているB12も、植物性のサプリメントが登場しています。PBWFを実践する上で注意したいサプリ選び、また別の機会にふれようと思います。

  1. 「WHOLE」T・コリン・キャンベル R.H.Liu 「ネイチャー」掲載論文の引用

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